「タイタニック」観ちゃった
A JAMES CAMERON FILM "TITANIC "
〜果たしてキャメロンは「水モノ」が苦手か?〜



おおしま採点:70点


製作費240億円を投じたジェームス・キャメロン監督の最新作、「タイタニック」を観てきました。丁度今日(1998年1月10日)の朝日新聞でもこの映画を観た著名人のコメントが掲載されていて、中でも淀川長治氏のコメントなんかは仲々ツボを心得たモノかな?って気はしたんですが…さてさて。

全体にかなりおさえた映画ですね、この作品。従来のキャメロン流のノリの良さを期待してしまうと、当然の事ながら裏切られます。まぁ、この作品に於けるキャメロン監督のコンセプトが「タイタニック船上でのロミオとジュリエット」だそうでありますから、基本的にはパニック・スペクタクルではなく、あくまでもラブロマンス映画として観るべきなのかも知れませんが。映画の大部分は上流階級令嬢ローズ(ケイト・ウィンスレット)と画家を目指す貧しい青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)の叶わぬ恋に費やされます。この部分に関してはかなりオーソドックスな展開でして、パターンを承知で、それをむしろ「お約束」として楽しんでしまう様な見方をすべきかも知れません。ストーリー的な趣向は殆どなく、ひたすら直球勝負の感があります。

タイタニック号沈没のシーンは、さすがほぼ実物大のタイタニック号のセットを建造しただけの事はあり、スケール感はありますが…割と見せ場は少ない印象。デジタル合成が可能にした、沈没しかかった船体の俯瞰ショットが新作を感じさせはするんですが、例によってデジタルドメインのクールな映像は、私を非常に冷静にさせてくれました。勿論、誤解がない様に言っておくと、映像の出来としては悪くないんですよ。ただ何だか淡々とカットが進んでしまう気がして…デジタル合成の進歩によって、かなり無理な状況も破綻なく描く事が可能になった最近の特撮技術。でもマインド的な部分では、観客を燃えさせる様な熱い特撮映像に仲々出会えなくなっているのも事実。何でも出来るところが逆に、特撮としての魅力を削いで行ってる様な気もします。技術的には確かに凄いし、ソツもない美しい仕上りではあるのですが。

船体が沈没して行く部分のスペクタクル描写も、意外な事にかなりあっさりしてます。水没する各部の部分カットをかなり客観的に捉えたものが多いせいかも知れませんが、淀川氏のコメントでも引合いに出されている1958年のイギリス映画「SOSタイタニック(ロン・ベイカー監督)」では、確かいきなり実物大セットの床がボッコリ抜け落ちるシーンがあってびっくりした記憶があります。そういう意味でのパニック映画的なエンターテインメント性という部分も、史実を重視した結果なのか、今回の「タイタニック」では全般に生彩がない感じです。

「アビス」でも、キャメロン監督は何となく大人しい印象があったんですが、同じ水モノの「タイタニック」でも「T2」「トゥルーライズ」等で見せたメリハリ感が不足している感が強いです。確かにテーマの違いって部分は大きいでしょうが、どうもキャメロン監督、水がからむと元気がなくなっちゃうみたいで…技術的には進歩していても、同じ系統の「ポセイドンアドベンチャー」等を越えられたかというと、ちょっと難しい処ではありますね。

1998.01.10