ワープロで使うNewton

〜ヘヴィー・ユージングな世界へ…〜


■ Newtonの使い道 ■

突然ですが、あなたのNewtonの使い道って何ですか?多分大部分の方が電子メモやスケジューラ、あるいはメールチェッカーとしてNewtonをお使いではないかと思います。現に私も大部分そういった用途にNewtonを使っています。これらの用途はNewton本来の用途として想定されたものであり、特にハードウェアの補強されたMP2000シリーズでは日常的な用途として充分実用範囲のものでしょう。

しかし、その一方でNewtonのスペックの限界に挑戦する様な(いやはや…)、ヘヴィーな使い方をしてみたいという、(ある種サディスティックとも思える)欲求も存在します。特にある程度まとまった量の文章作成・推敲のツールとしてNewtonを使いたいというニーズは、Newtonキーボードの存在を着火点として、確実に存在するのではないでしょうか?それでは、実際にNewtonを文章作成ツール、ポータブル・ワープロとして使おうと考えた時に、どんなハードルが存在するのでしょうか?

■ モバイルPCに対するNewtonのアドバンテージ ■

Newtonを文書作成ツールとして使おうとする場合、入力のストレスを考えるとキーボードの使用は必須条件と言えます。ただ、本体に加えてキーボードまで携帯するとなると、Newtonの携帯性はかなりスポイルされてしまいます。重量も結局1kg近いものとなり、本体+キーボードのサイズ共々流行のB5サイズPCとほぼ同様のものになってしまいます。執筆開始から推敲・完成まで一貫した作業を一つのハード上でこなそうと考えると、それは打ちやすいキーボード、大きく広い画面、入力スピード、変換効率の良い辞書等々、整備された作業環境を考えてもPCでの作業にメリットがあります。

しかし、外出先で思い付いたらすぐ入力できる立上りの早さやバッテリ持続時間を気にせず作業できるNewtonは、メインのPCに対するサブ的な役割では、それなりに使い道があります。また、キーボードが分離でき、しかもキーボードなしでも日本語入力可能というフレキシブルなNewtonのスタイルは、内容を読み返して確認したり、ちょっとした推敲作業をするという(ブラウズ+小規模な変更)用途では、PCに対しても充分なアドバンテージがあるのではないでしょうか?

■ 快適をはばむもの(-10061エラーとの戦い) ■

Newton、特にRAMの拡張されたMP2000UG、MP2100等を使う上でいつも問題になるのがOSのバグとよばれる-10061エラー。このエラーは、特にCPUを使うヘヴィーな作業で出現する事が多く、文字変換でCPUに負担のかかる日本語処理では、かなりの頻度で出現し、効率・意欲(いやはや…)を低下・喪失させる大きな要因となっています。根本的な解決にはAppleによるOSのデバッグが必要なのですが、ディスコンされたNewtonOSにそのような対処を望む事も難しい状況です。ただ、このエラーに対処するためのユーティリティーがいくつか作られ、フリーウェアとして公開されているのは御存知の通りですね。

SysPatch & Heaven or Hell

-10061エラーを回避するために各種のユーティリティーが開発されていますが、有名なところではこの2つでしょうか?いずれもON/OFF時や使用中の一定間隔にメモリチェック・修復を行う形式になっている様です。エラー出現の度合は当然ながらチェックの回数・間隔と反比例するのですが、使用中一定間隔でチェックを行った場合、チェック時にCPUにそれなりの負荷がかかってしまい、入力した文字の取りこぼしや入力遅延が発生、使用感が著しく低下するというデメリットが出て来ます。

文章の入力はリズムに支配されているような処があって、多少スピードが遅くても何とか使えるのですが、反面、入力のペースが乱される様な状況では、かなりストレスを感じてしまいます。そんな訳で私は多少まとまった文章を入力する際には、これらのユーティリティーのチェック頻度を多少下げるようにしています(完全に止めてしまうと確実にエラーが発生してしまうので、頻度を下げる程度に留めた方が無難です)。

個人的にはSysPatchを使用していますが、デフォルトで500に設定されたチェック間隔を4000程度まで拡げて使うようにしています(勿論入力が終わったらデフォルトに戻しています)が、この辺りは実際の使用感、エラー出現頻度等を見ながら、調整していくのが現実的でしょう。

リスタート

Newtonを散々使った状態でそのまま文章を打ち出すのもエラーによる不安定を招く原因となり得ます。この辺りは搭載メモリの少ないPCを長時間連続して使用すると、かなりの確率でフリーズやエラーを起こすのと状況的には同じです。「転ばぬ先の杖」ではありませんが、文章作成の前にはソフトリセット(本体裏のリセットボタンをつっつくおなじみのリセットですね)を行い、Heapをきれいに(こんな表現が適切か分かりませんが)しておいた方が精神的にもいいですね(いやはや…)。ただ、その度毎に本体をひっくり返すのも億劫なので、私はDashBoardのランチャーを使っています。

■ 環境 ■

キーボード

どれほど手書き入力が発達しようと、長文の文章を作成するには、はやりキーボードは必須アイテムです。未だキーボードほど効率的にコンピュータに文章を入力する方法はないと言ってもいいでしょう。MP130の時はサードパーティーからもキーボードが発売されていましたが、MP2000シリーズで使用できるキーボードは純正のNewtonキーボードのみという事になります。

Newtonキーボード

唯一使用できる純正キーボードです。一般にこのキーボードはキータッチが良いと評される事が多いのですが、実際には結構個体差が大きく、モノによってはかなりギシギシとしたタッチのものもあって頭が痛いところ。お店で購入する時に試用させてもらえればベストなんですが、難しいでしょうね。軽量化を図るためか、ボディ全体が軟質系の樹脂で成形されていて、見方によってはチャチな作りです(いやはや…)。タイピング音はそれなりに大きく、カチャカチャうるさいので、電車の中や喫茶店で使うのはちょっとはばかられそう。

タイプライターの国の製品にもかかわらず、最近のApple製品のなげやりなキーボードにはがっかりさせられる事が多いですが、このキーボードも例外ではないと言った処でしょう。私は2個所有してますが、そのうち1個のキータッチは最低です(いやはや…)。

川崎和男デザイン伸縮式キーボード


EIZOのディスプレイや富士通インタートップのデザインでおなじみ、インダストリアル・デザイナーの川崎和男氏がMacintoshのプレゼンテーション・モデルで提案した伸縮式キーボードをNewton用にアレンジした製品。2年程前に製品化の動きが進められていたらしいのですが、現在まで発売されていないところを見ると、製品化は頓挫してしまったのでしょう。伸縮する事で携帯時のかさばりを最小限に押さえられる筈でした。とにかく純正以外に選択肢のない状況をなんとかして欲しかったのですが…

アプレット

実際に文章を入力するためのツールとしては、内蔵のNotesか統合アプレットのNewtonWorksという事になるでしょう。Notesは所詮1枚物のメモとして設計されており、スクロールするような長い文章を作成するためには機能的に不満なのも事実。その点、NewtonWorksはワード・プロセッシングを目的として設計されたアプレットなので快適なスクロールやMacWriteばりのタブ設定(これはNotesにコピー&ペーストしてもスペースが挿入され、ほぼ同フォーマットで移行可能)、便利な編集コマンド等、Notesでは得られない快適な環境を実現できます。動作も軽快で、場合によってはNotesより反応が良いようにも思えます。基本的にはNotes1ページを越える分量ならWorksの利用にメリットがあるでしょう。


■ アイディアを練る ■

文章の構成を考えたり、執筆のアイディアを練ったりする場面でもNewtonは活躍します。この用途では内蔵のNotesステーショナリーである「アウトライン」、アイディア・プロセッサ「Mandal-Art」といったアプレットを使いながら想を練るという事になります。

Mandal-Art

現バージョンの1.5でOS2.1とNLKに対応したNewton唯一のアイディア・プロセッシング・アプレット。9分割されたマス目の中にトピックを書き、さらにそれぞれを階層化してゆく発想が独特。MP130時代は本体のスペックから日本語入力が苦痛で、実用レベルとは言い難かったのですが、MP2000シリーズに対応する事で、そこそこ快適な入力が可能になりました。

最新版では内容をNotesにアウトラインやチェックリストとして書き出したり、マス目のテキストをNotesからインポートしたりする機能が加わり、使い勝手はかなり改善されています。ただ、そのままの状態では9分割という画面構成が枷となり、全体を一覧できないというのが、アウトライン的使い方をする場合には結構使いづらいかも知れません。基本的にアイディアをまとめるというより、捻り出す為の補助ツールという位置付けのアプレットでしょうか?

アウトライン

Notesステーショナリー。現状ではこのアウトラインやNotesのメモなどを使って構成を考えるのが現実的かも知れません。アウトラインを使用するとトピックを入れ換えながら構成を考えるような事もできるので、一般的なアウトライン・プロセッシングにはまぁまぁ使えるのではないでしょうか?個人的にはMacの代表的アウトライナーであるInspirationのようなグラフィカルなアウトライナーが欲しいところですが、意外に「Notesに手書きスケッチしてしまう」のが吉かも知れません(いやはや…)。

■ テキストを取り出す ■

完成した文章をデスクトップPCに取り出し、更に推敲したり、体裁を整えたりする訳なのですが、御存知のようにOS2.1では未だに日本語テキストを簡単にやりとりできないのが現状です。勿論不可能ではありませんし、様々なNewton系サイトには各種のツール、ユーティリティーを使ってNewtonとPCの間でデータをやりとりするための方法が提示されています。でも個人的にはもう一つ使いたいと思えないのですが…

とにかく現状のNewtonで細かいことを考えずにテキストをやりとりしたいならi-mailを使っての電子メール送受信がもっとも簡単、かつ安定的にデータをやりとりできる手段でしょう。MP2000シリーズのユーザーなら、問答無用で通信環境を整備しておく事をお勧めします(いやはや…)。Worksで作成した文章の場合、編集機能で文章を全選択し、Mailステーショナリーにペーストして送信してしまいましょう(いやはや…)。

X-Port2.1

エヌフォーからリリースが予告されているOS2.1と日本語に対応した対PCデータ交換ユーティリティー。テキストやグレースケール・グラフィックの交換が可能との事ですが、海の向こうからはバージョン3.0の開発間近の報が聴こえてきます…この期に及んでもNewtonにまともなPCコミュニケーション・ツールが用意されていないというのは…


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