喫茶部 宇宙軒


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表紙 裏表紙


★「ガンバロン」幻の企画にせまる!★


先日、貴重な資料を入手する事ができました。それが何と「小さなスーパーマン・ガンバロン」の企画ご案内!内容から察するに、テレビ局や放送枠が決定し、プリ・プロダクションがある程度進行した状態で、キャラクター関連商品等マーチャンダイジング関連のスポンサーを募るために使用した資料ではないかと思うのですが、企画書をビジュアルに構成したような内容になっています。

ちなみにパンフレット製作は「ゴッドマン」や「クレクレタコラ」、新しめでは「電脳警察サイバーコップ」等を制作した東宝企画。番組制作には代理店の読売広告社が入ってるんで、東宝企画とその辺の分担がどうなっていたのかはちょっと分かりませんが、「ガンバロン」の番組自体は初期話数の特殊合成に東宝特殊技術課がクレジットされる等、それなりに東宝との関係はあった様ですので、まぁそれ程意外な関係ではないかも知れません。

「ガンバロン」は当時の掲載誌やレコードを除くと資料らしい資料は殆どなく、折角入手できた新資料ですのでここでその全貌を公開し、ファンの方々にお役立ていただこうと考える次第です(以下色違いのテキストは筆者コメントです)。



NTV4月新番組企画ご案内 株式会社東宝企画 昭和52年4月


【放送日・ネット局】


放送日:毎週・日曜日

放送時間:午後6時30分~7時00分

制作:日本テレビ 読売広告社 創英舎

対象:幼児から小学生までを中心にした家族全員

著作権表示:(C) NTV

主題歌:ビクターレコードより4月25日発売

雑誌掲載:講談社系各誌

ネット局:NTV(日本テレビ)、STV(札幌テレビ)、RAB(青森放送)、TVI(テレビ岩手)、ABS(秋田放送)、YBC(山形放送)、MM34(ミヤギテレビ)、YBS(山梨放送)、KNB(北日本放送)、FBC(福井放送)、YTV(読売テレビ)、HTV(広島テレビ)、NKT(日本海テレビ)、KRY(山口放送)、RNC(西日本放送)、RNB(南海放送)、RKC(高知放送)、FBS(福岡放送)、KTN(テレビ長崎)、KTS(鹿児島テレビ)、CTV(中京テレビ)6(土)18:00~ セミネット:NST(新潟総合テレビ)、TKU(テレビ熊本)、OBS(大分放送)、OTV(沖縄テレビ)、ITC(石川テレビ)

【はじめに】


日本テレビは77年春の編成を久々の大型特撮番組「小さなスーパーマン・ガンバロン」でかざります。「マッハバロン」「レッドバロン」を企画・制作したスタッフが満を持してあたためてきた企画です。

○毎回話題をまくようなゲスト出演者〔ピンクレディー、フォーリーブス等〕
○意外性に富んだ敵キャラクターの制作
○雑誌、他番組とのタイアップ

と、日曜夜の話題の中心には「ガンバロン!」にすべく、鋭意制作に入っております。

ピンクレディーの出演予定があった事は結構いわれているのですが、ここで触れられています。実際のメジャーゲストはフォーリーブス(第1話)、ザ・リリーズ(第2話。1986年、本名の燕(つばめ)奈緒美、真由美名義で「地球防衛軍テラホークス」「ワンダービートスクランブル」の主題歌を相次いで担当、復活を果たした事は印象深い)、宇佐美淳(第3話。「光速エスパー」の朝川博士、「ミラーマン」の御手洗博士で有名。友情出演)、三木聖子(第4話。後年(1981年)石川ひとみがカバーした荒井由実作「まちぶせ」のオリジナル・シンガー(1976年6月発売))。ちなみにリリーズ、三木聖子は共に当時渡辺プロダクション所属でした。

キャラデザイン

ガンバロンのキャラデザイン:

どうやらこれが札木幾夫氏によるデザイン画の様です。ガンバロンに関しては(当時のテレマガ等は確認のしようがないのですが…)従来デザイン画が殆ど露出しておらず、非常に貴重なもの。仲々可愛らしく描けてます。また、パンフレットの表紙には結構リアルタッチで第1話、第2話に登場するオソロシゴリラが描かれていますが、このイラストのガンバロンも手の部分や鼻筋の曲線の描写が上のデザイン画と酷似しており、札木氏の筆によるものではないかと思われます。怪人ドワルキンのリアルな造形を考えると納得できるものがあります。

【企画意図・設定】


企画意図:

このかわいらしいキャラクターデザインをごらん下さい。 これが、わたくしたちの主人公「小さなスーパーマン・ガンバロン」です。 ロボットではありません。 小さなスーパーマンです。

変身活劇ものの古典「スーパーマン」の子供版と云えばお判りいただきやすいかと思います。 ふだんは全くふつうの子供です。 彼が「ガンバロン」であることは、親友たちでさえ誰一人知りません。 「ガンバロン」の活躍する場は、明るくさわやかな太陽の下です。 ツキ抜ける特撮シーン、はずむテンポと手に汗握るカラッとした明朗少年活劇です。

ドラマの世界は、これも今や古典的となった名作「鉄腕アトム」のあの世界です。 明るさ、かわいらしさ、あたたかい愛。そして、夢です。 子供の限りないロマンを感じさせる夢のある少年活劇。 これがわたくしたちのネライです。

従来から言われていた実写版鉄腕アトム指向(講談社のムック「ヒーロー大全集」での解説がルーツ)はやはり登場します。「ガンバロン」のストーリー全編をつらぬくハートウォーミーな感覚は、企画当初からの指向であった事が分かります。

設定:

丘の上に、ふしぎな白い洋館があります。 これが「小さなスーパーマン・ガンバロン」の「基地」であり「住居」です。 コンピュータの組み込まれた科学要塞です。 大きなガラス張りのドームの部屋からは、居ながらにして満天の星空が見えます。

この洋館の主は、小学生です。 天道 輝。5年生。 正義感の強い、冒険好きな腕白坊主です。 そして、この少年がガンバロンとなります。

こんな大きな屋敷と、現代科学の粋を集めたさまざまなシステムを残してくれたのは、故人のお爺ちゃんです。 お爺ちゃんは、世界でも一流の科学者でした。 はじめての孫に、自分の残せる限りの遺産を残していってくれたのです。 お父さんとお母さんは、アメリカにいます。 仕事のため、長期滞在中なのです。

では、こんな広い洋館に、ガンバロンはたった一人なのでしょうか? いいえ。コンピュータ・ルームには、大電子頭脳「ゴエモン」がいます。 動くことこそありませんが、人間と同じように人格のある相手です。 たとえば、主人公と「対話」ができます。 難問題にぶつかったときには、たちどころにどんなデータでも与えてくれます。 但し、回答は出してくれません。 「自分のことは自分で解決しろ」というのが、ガンバロンの能力を信じた「ゴエモン」のあたたかい愛なのかも知れません。 (このことでもわかるように、この番組では子供を一人前の人格としてあつかいます。子供は小さな大人なのですから。) でも淋しいとき、辛いときには、慰めや励ましの言葉をかけてくれます。 「機械」というよりも、ガンバロンにとっては、たしかな「よき友」であるのです。 「ゴエモン」の外観は、一見トボケた顔に見える(壁面一杯に組み込まれた)大電子頭脳ですが、常にやさしい目でガンバロンを見守り、ときに応じて、その「口」から、あたたかいミルクやアイスクリームや本を出してくれます。

天道輝が住む古い洋館は、外観のみ駒場公園にある旧前田利為邸が使用されています。さすがに「ガラス張りのドーム」は存在しないので、映像化されませんでした。ゴエモンはこの設定より随分怖い親父さんといった感じで、「負けて帰ってくるとすぐゴエモンを頼りにする!」とか輝を叱咤するシーンが多い様な(いやはや…)。ダイバロンを駆っての初陣でジャイアントゴリに敗れたガンバロンが再びダイバロンを呼んだ時、メカを発進させない厳しい対応が印象的。アイスクリームはくれなかったなぁ(いやはや…)。

そして「ムッシュ」と呼ばれる執事がいます。 三代に亘って当家につかえる忠実な下僕です。 輝がガンバロンとなって屋敷の窓から空へ飛び立つとき、そっとガンバロンに5つのパーツを着せかけてくれるのが、このイギリス紳士風のムッシュなのです。

ムッシュは無口です。 殆ど一言も喋りません。 ガンバロンが出て行ったあと、このムッシュとゴエモンがケンカすることがあります。「お前があんなことを云うからキケンな目にあうのだ」「ソノモンダイニハオコタエデキマセン」 2人(?)とも、主人公に対する愛があまりにも深い故なのですが。 そしてシリーズが展開していくと、序々にその巨大な全身をあらわす?…があるのです。 それは……巨大なロボット・ダイバロンの登場です。ダイバロンは全長35mのスーパーロボットで、バクシーン(下半身)とヒライダー(上半身)とトブーン号(ジョイント)のつの(注:この部分の欠落は原文のまま)合体で出来あがるスーパーロボットです 操縦はもちろんガンバロンこと天道輝ですがそのパワフルな合体シーンはきっと話題になるはずです。 ふだんの少年輝にもどったガンバロンには、愉快で明るい4人の友だちがいます。 デスク、ケン玉、アリス、チーコ。 この4人は、廃車となったポンコツバスとその周辺の空き地を遊びの場にしています。 みんな、記者志望の卵たちです。ポンコツバスが、彼らの編集部です。「少年タイムス」というのが彼らの発行しているガリ版の週刊新聞でありの(注:この部分の誤植は原文のまま)「取材活動」はそのまま子供たちの遊びであり、クラブ活動であり、冒険なのです。

ムッシュが三代に渡って天道家に仕える「下僕」であったという設定は、恐らく劇中では語られていないと思います。物語の中でのムッシュの輝に対する献身ぶりをみると納得できる処ではあるのですが。ダイバロンに関してはやはりシリーズ開始当初から登場が予定されていた様ですね。シリーズ構成的には当初から強化策を盛り込んだ異例の作りです。トブーンが「ジョイント」の役割を担っていたとは…これに関しては、第26話で巨人ドワルキンがダイバロンの弱点を「お前の弱点は分かっている!操縦席のあるそのヘソだ!!」と看破しますが、あれは単に操縦席があるというだけではなく、ジョイント部分を攻撃し、合体を破る明確な意図があったという事ですね。

少年タイムスの面々に関しては、企画書ではもうちょっと細かい設定があるのかも知れませんが、結構あっさり流されています(いやはや…)。「少年タイムス」がガリ版刷りであるらしい事は、劇中でも描写されていますが、週刊だったんですね。結構写真を撮ってましたが、ガリ版じゃ載せられないですね(いやはや…)。


ポンコツバスを提供してくれたのが、三枚目的ガンコ親爺のポンコツ屋です。 このオヤジの一人娘が、一流新聞社に勤める本物の美人記者で、このグループの後見役です。

ガソリンスタンドのオーナー、「大将」こと西郷大造と娘の新聞記者西郷百合はこんな感じ。「ポンコツ屋」は適当なロケ地が見つからなかった為に変更されたのでしょうか?ちなみに人物紹介では磯間署長に関する記述がありません。

輝を含めたグループは、その「活動」を通じて、よく事件に遭遇します。 そして、そのたびにガンバロンとも出逢うことになります。 グループは、視聴者と同じように、一ぺんにガンバロンの大のファンになります。 「カッコイイな!」 「かわいらしいわ」 「おれもガンバロンみたいに強くなりたいな」 しかし、誰も、この小さなスーパーマン・ガンバロンが、自分たちの仲間の輝であることを知らないのです。

それにしても輝は恵まれた子供です。 大きな家があります。 家の中にはどんな子供でも喉から手が出そうに欲しくなる仕掛けがいっぱいあります。「ゴエモン」や「ムッシュ」もいます、スーパーロボ「ダイバロン」もいます。 すばらしい友だちが居ます。 何一つ不自由なく、子供たちの憧れる山ほどの要素の中で暮しています。 ____________でも、 本当にそうでしょうか? ガンバロンは、時たまちょっぴりと淋しくなることがあります。 闘い終って日が暮れて、一人になったガンバロンが、ふと目に涙をため、広いドームを通して降るような星空を見上げることもあります。 それは、輝がどんなときにでもぐちをこぼさず、自分のけ(注:この部分の誤植は原文のまま)の力で頑張り通す性格だからです。 この主人公の、子供ながらにじっと耐える姿は、視聴者子供たち(注:この部分の欠落は原文のまま)に強い感動を与えてくれるでしょう。

やはり「ガンバロン」の名を背負った時から、こういう運命は定められていたという事でしょうか?「ガンバロン」って結構ドラマ的な魅力もあるシリーズだと思いますが、こういう部分にも理由がありそうです。先に登場する「子供を一人前の人格として扱う」というシリーズ方針も、これに貢献しているのかも知れません。

最後に説明しなければならないのは、悪役のことです。 企画意図の項でも述べました通り、本番組からは、あらゆる「暗さ」を排除してあります そのため、悪役も、多少トボケた所のある、全面的には憎めない悪博士を登場させます。 ワルワル博士がその人です。 もしひねくれた性格でなかったら超一流の科学者になったことは疑いようもない才能を持っているのに、何故かガンバロンを目の敵にします。 (ガンバロンの正体が輝であることを見抜いている唯一人の人物です。)

ふだんからイジワル爺さんのワルワル博士は、ドワルキンに変身すると、本当の悪人になってしまうのです。世の中を大混乱させることが面白くてたまらず、そうせずにはいられなくなってしまうのです。 謎の怪人ドワルキンは、巨大動植物や、珍薬を次々と作り出し、日本中に事件と混乱をまきちらします。

われらのガンバロンは、この謎の怪人ドワルキンに敢然と立ち向います。 でも、その正体は、ワルワル博士だと見当はついているものの、決定的な証拠は何一つなく、事件は解決したものの、ドワルキンには今一歩の所で逃げられてしまうということになります。

こうして、毎回毎回、ワルワル博士=謎の怪人ドワルキンの悪だくみをめぐって、ガンバロンの明るく痛快な大活躍が展開します。

「あらゆる暗さを排除する」という方針も仲々大胆なテーマ提起。過去の「バロンシリーズ」が比較的哀愁のあるドラマを展開してきたのと比較すると、やはり少年ドラマという事で、制作側も気をつかっている様です。ワルワル博士に正体を知られているという設定は、やはり作劇しずらかったのかシリーズには引き継がれていません。

登場キャラクター


ダイバロンのデザイン画も非常に貴重なもの。恐らくデザイナーの山口修氏の筆によるものと思われます。デザイン画では造形物より、もうちょっとアクの弱い"普通の"ロボット風(いやはや…)。既に新宿中央公園での撮影会が行われた後という事で、造形物の完成していたガンバロンと3つのメカは写真で掲載されています。この撮影会にはガンバロンや怪人ドワルキンの他に天道輝やムッシュ、ワルワル博士や番頭ワルベエ等の登場人物も参加した様です。撮影に使用されたガンバロンはプロトタイプで、バロンベストのサイズが大きく、バロンアームの内側に吸盤のような赤い突起が付いているものでした。

「ガンバロン」にはモデル工房として精密メカモデルから着ぐるみまでオールラウンドにこなす"ヒルマモデルクラフト"と東宝特撮の金属製モデルや「ウルトラマン」のジェットビートルを手がけた金属模型の雄、"郡司製作所"の2工房が参加していますが、3つのメカは郡司製作所製の金属モデル、ダイバロン合体シーン等の変形メカがヒルマモデルクラフト製ではないかと思うのですが…スチルで見てもガンバロン・メカのシャープな仕上がりは工芸品のような見事さです。


【登場するキャラクター】


主人公天道輝は、5つのバロン・パーツを装着することによって、ガンバロンとなります。

1.バロンメット:

フード(お面)つきのヘルメットです。 これをかぶれば10トンの岩石が頭上に落下してきてもビクともしません。 頭からぶち当たればビルの壁でもぶち破ります。 防毒面、潜水ヘルメット、宇宙ヘルメットの役割も果します。 無線装置が組み込まれていて、「基地」の大電子頭脳「ゴエモン」と連動。難モンダイのデータを与えて貰えます。右のダイヤルで聴力百倍。左のダイヤルを回すと視力が百倍となり、切り替えによって透視も可能です。

2.バロンウィング:

背中に取り付けられる、小さな天使の羽根型のジェット装置。 飛行自在で、平均時速800km。瞬間時には、弾より速く飛ぶことができます。

3.バロンアーム:

特殊長手袋です。 コンクリート壁をぶち抜く力を持っています。 ジャンボジェットぐらいの重さなら持ち上げることができます。 レールなどは、アメのようにぐんにゃりとネジ曲げることができます。

4.バロンブーツ:

特殊ブーツです。 跳躍力10メートル。走る速さは新幹線をぬいてしまうほど。 特殊磁力の効果で、手がかりのない垂直壁面を登ることも出来ます。

5.バロンベスト:

耐熱、耐寒はもちろん、ピストルの弾をもハネ返す特殊チョッキです。

以上5つのパーツを装着することによって少年天道輝はガンバロンとなって大活躍をすることができるのです。

<トブーン号>

ガンバロンの愛用機。小さいがどんな小さな広場でも垂直に降下出来る。 ガンバロンの声に反応して飛来する。 全長3m、重量1t、最高速度マッハ6

<ダイバロン>

腹部に天道輝が乗ったトブーン号が飛び込むと全てのパワーがONとなる。 全長35m、重量520t、飛行能力最高マッハ10。 全身に30余の武器を内蔵。 (ヒライダー+バクシーン+トブーン号=ダイバロン)

<バクシーン>

全長20mの超大型戦車。ビル街を文字通り、バク進する迫力はすごい。 重量350t、飛行も可能。 (実はダイバロンの下半身の合体前)

<ヒライダー>

全長15mの爆撃機。 最高速度マッハ12、重量160tと軽い。 パワー全開で宇宙まで飛び出す。 (実はダイバロンの上半身の合体前)

【その他の登場人物「悪役」】


ワルワル博士は、実は主人公の故人となったお爺ちゃん博士の親友でした。 ワルワル博士は子供がないくせに大の子供好きでした。 お爺ちゃんは約束しました。 「孫が生まれたらお前に養子にやろう」 そのくせ、赤ちゃんがあまりに可愛かったので、この約束は実行されませんでした。 ワルワル博士は怒りました。 イジワルばかりするようになったのも、年とともに可愛さを増す主人公を目の敵にするようになったのもこういう訳なのです。(このことは最終回においてのみ語られます。)

曲がりなりにも子供好きだったワルワル博士ですから、どこか憎めない所があります。 変身して謎仮面をつけ、謎の怪人ドワルキンとなりますが、自分で作ったワルワルロボットが、思いきった悪いことをはじめると大慌てしてみせたりします。

ガンバロンに下僕がいるように、ワルワル博士=ドワルキンにも下僕がいます。

「番頭ワルベエ」です。 ややもすると「善」に走りそうになるワルワル博士を叱り、いましめ、「イジワルの道」を歩ませようとする「軍師」であり「参謀」です。 ところが、ひとたびワルワル博士がドワルキンになるとこの立場は逆転します。 さすがのワルベエも「博士、それはちとひどすぎますぞ」というようなひきとめ役にまわらざるを得ないほど、ドワルキンは「悪く」なってしまうのです。

ワルワル博士=謎の怪人ドワルキンは、毎回手をかえ品を変えて世間を混乱におとしいれる悪いイミのイタズラをします。

(1)自分たちだけがイタズラのつもりで世間から見ると、立派な犯罪だというものがあります。 (例=誘拐、脅迫、強盗、等々) (2)イジワル計画のための珍発明の薬によって巨大化した動植物が「計画」以上の悪いことをしてしまうものがあります。 (3)主人公ガンバロンに最初から目標をおいて、直接的に苦しめ困らすことがあります。 (4)ワルワル博士の純粋な欲望のための犯罪があります。

この(1)(2)(3)(4)が、シリーズをころがす展開となり、これにゲストの子供が絡んで主人公と心の交流をはかるというドラマ作りにします。

さて、いよいよこのパンフレット最大の問題箇所(いやはや…)、シリーズの根本に関わる設定です。ガンバロンもドワルキンも実は故人である「お爺ちゃん」が誕生のキーとなっている訳です。なぜワルワル博士は子供を嫌いながら子供を愛するのか?なぜ輝を目の敵にするのか…劇中で明確にされなかった設定が明らかにされています。しかし「養子にやろう」っていうのは、さすが第1話でゴエモンに「4月3日、6時47分6秒47きっかりに生まれたお前しか、ないのだ。」と強引なセレクション理由を語らせるお爺ちゃんだけの事はあります(いやはや…)。この「4月3日云々」という選択理由は本放送当時も子供ながらに納得できなかったんですが、自らの過失でドワルキンを誕生させ、輝を愛憎劇(?)の渦中に巻き込んでしまったお爺ちゃんとしては、精一杯の防衛システムを構築し、ガンバロンの力を輝に与える事でしか、怒りに燃えるドワルキンの攻撃から輝を守る術がなかったという事なのでしょう。結局理由など何でも良く、輝はガンバロンにならねばならなかったのです。

実際の「ガンバロン」は第25話を最後に日曜夕方の放送枠を東京ムービー制作の立体アニメーション「家なき子」に譲り、第27話からは制作体制を大幅に縮小した「御宿シリーズ」に突入してしまったため、明確な最終回がありませんが、もし当初の予定通りラストを迎えたなら、こんな衝撃的な最終回が展開されたのでしょう。そう考えると、現実の展開は、それはそれで「ガンバロン」という作品にはふさわしい幕切れの様な気もします。

ちなみに放送時間変更は番組編成上の問題もあるでしょうから別としても、第27話以降の制作体制縮小については、スポンサーの1社(他には笹川会長の"日本船舶振興会"や"カンロ飴"が名を連ねていたと思いますが…)、ソフビ人形の"ブルマァク"がシリーズ放送中に倒産したためやむを得ずという説があります。バロンシリーズでは1作目の「スーパーロボット・レッドバロン」でも「コインクーラー」で売り出し中だったスポンサーが倒産し、シリーズは強制終了、制作の宣弘社はこれが原因でテレビ映画制作から撤退という不幸が。どうも「バロンシリーズ」はスポンサーに恵まれない様で…







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