O H S H I M A' S
M O V I E  I M P R E S S I O N S


DEEP IMPACT/ ディープインパクト
DreamWorks L.L.C. & Paramount Pictures 1998
監督:ミミ・レダー

スピルバーグ製作総指揮によるパニック大作。いわゆる「終末モノ」に分類される作品であります。巨大な彗星が地球に接近、衝突をさけるべく人類(…というか殆どアメリカ)の英知を賭けた回避作戦が展開されるのですが、奮闘むなしく彗星の一部は地球に落下してしまうという恐るべき展開。

全体的には非常に真面目な映画で、生臭い人間描写もあまりありません。女性監督だからなのか、ドラマ部分に於ける「感情の機微」的な部分に、かなり力点が置かれた演出になっています。要はかなりウェットなカラーという訳ですね。過去のパニック映画が勇気を持って危機に立ち向かう人々という、どちらかというと男性主導的なヒロイックな世界を強調していたのに比べ、この作品では「危機的な状況下での愛情」という部分に、スポットが当てられている辺りがミソであります。この辺りのカラーを良しとするかどうかで、この作品に対する評価というのは大きく別れる処でしょう。

演出的にはさすが期待の新鋭という触れ込みだけあって、かなりの手堅さ。彗星へのランディング・シーン等サスペンスの盛り上げも仲々手慣れています。大きく破綻している部分というのはないと思うのですが、全体としてはちょっとサービス精神に欠けていて淡白な印象。登場人物も強烈な存在感を残す程ではなかったですね。

特撮はおなじみILMが手掛けてますが、CGの力を得て向うところ敵なしの感があります。あらゆる状況を破綻なく描き切る特撮技術は、もはや円熟の域に到達したと言えるのではないでしょうか?津波に飲まれるニューヨークの映像は、現実の出来事をドキュメンタリー・フィルムで観ているかの様なリアリティがあります。出来としては素晴らしいのですが、例によって特撮シーンは思ったほど多くないのでありました(いやはや…)。

個人的にはILMの素敵な特撮カットを楽しむ作品だと思います。ドラマ部分は後に強烈な印象を残す程の「インパクト」ではありません。結構うまく観客の涙腺を刺激する演出にはなっているのですけれど。良くも悪くもかなりクールな視点が根底にある作品ですね。

1998.07.20


GODZILLA/ ゴジラ
Tristar Pictures 1998
監督:ローランド・エメリッヒ

何かと話題のアメリカ版「ゴジラ」。長年に渡る水爆実験の結果、変異した爬虫類「ゴジラ」が産卵の為、遥かニューヨークはマンハッタンまでやってくるというストーリー(…って要約し過ぎですね)。

取り敢えず日本の「ゴジラ」の印象は一切忘れて頂いて結構です。単に同姓同名の別人ですから(いやはや…)。逆に日本の「ゴジラ」との比較は、この作品を評価する上で、「邪魔」以外の何モノでもない様な気がします。こちらは「ディープインパクト」とは対照的に、エメリッヒらしいサービス精神一杯のエンターテインメント。物語も筋らしい筋は殆どなく、映画を成立させる為のほんの「付け足し」だと思って間違いはないでしょう(いやはや…)。とにかくこの作品は巨大な爬虫類の縦横無尽な活躍と、目くるめく都市破壊を堪能する為に存在するのですから。

とにかくマンハッタンに現われてからは壊す壊す!(いやはや…)ハリウッドが正面切って巨大怪獣による都市破壊を描くというだけで、この作品の価値はあります。圧倒的な巨大感、量感は日本特撮の伝統的手法では決して描き得ない映像の魔法。実景でブン回されるカメラに、ピッタリシンクロする巨大ゴジラという、これまででは全く考えられないアングルが次々に登場する辺りも要チェックであります。

ゴジラは総てCGで表現されたかと思いきや、1/4のカットはアニマトロニクスと着ぐるみ(!)で撮影されたそうです。特定の表現手法に固執せず、適材適所のテクニックを選択する辺りがエメリッヒ作品の特撮の魅力ですが、今回も冒頭の大型漁船襲撃シーンのモデル撮影が、往年の円谷特撮を彷彿とさせて泣かせます。あの海面の描写は何年ぶりの再現でしょう。実は円谷特撮の正当な継承者は、プールをプールにしか撮れない川北特撮ではなく、ハリウッド特撮陣であった様です。

とりあえず私は楽しめましたよ、この「ゴジラ」。エンディング・クレジットの最後には「この作品を田中友幸氏に捧ぐ」的メッセージも観られますので要注意。

1998.07.20