The Hitchcock's SFX

以前から観たかったアルフレッド・ヒッチコック監督の「逃走迷路」(1942)が先日テレビで放送されました。特に気になっていたのが、この作品のクライマックスに登場する自由の女神像での追跡シークエンス。ここでは、密かにこのシークエンスの特撮を分析しちゃいましょう。

っと、その前に、ブルックリン海軍工厰〔こうしょう〕での爆発シーン。戦艦アラスカの進水を妨害すべく仕掛けられた爆弾が、進水式で爆発するシーン。何と実景に爆発をトラベリング・マットで合成する荒業〔あらわざ〕!一瞬のカットですが、ハッとするインパクトがあります。良く見ると、これだけの爆発なのに、周囲の群衆が平然としてますが(いやはや…)、ワンカットなんで殆ど気付きません。合成される爆発も見事な出来栄え。まるで花火みたいな最近の日本特撮の爆発とはえらい違い。

さて、いよいよ問題のシークエンス。ヒッチコック作品には見事な合成カットが一杯ありますが、このカットも素晴らしい画面構成。自由の女神をこう撮れるかぁ!画面の雰囲気からして、自由の女神像のマット画を中心に、画面左手前のトーチランプ付近のセット、台座と地上の人物、水面の計4種類の素材を合成してるみたいです。水面にはご丁寧に船が航跡を描いて通りすぎます。何てマニアック!

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ファンタスティックな合成の数々。基本的なテクニックはマット合成とリア・プロジェクションみたいですね。

はトーチランプ部分の実物大セットですが、周囲の空をマット合成してます。恐らく撮影用の足場や、俳優を釣り下げる仕掛を隠す目的じゃないかな?

は実物大セットに遠景のニューヨークの町並みと海面をマット合成。ダイナミックな積雲と、石柱を想わせる高層ビルのマット画が、不思議な様式美を醸し出します。海面は勿論ちゃんとさざなみを立てる実写ですが、この映画の海面、本当の海じゃなくてセットプールでの撮影じゃないかな?波のスケール感が実際の海面と異なってます。

も高さを感じさせる合成カット。手首から下が恐らくマット画だと思われます。それに海面を合成し、なおかつ画面左下には、ちゃんと地上の人物をハメ込んでます。

はぶら下がる人物を真上から捉えたショット。背景をリアプロジェクションで投影している様です

「問題」の墜落カット。映画公開当時から、どうやって撮影したのかがさんざん議論されたと言う伝説的なカット。1〜6までをワンカットで描いて見せます。落下する人物を真上から捉える驚異のカメラアングルは、近年の「ダイハード」においてさえ、尚オマージュが登場する程。

さぁ行きましょう名カット。どうやらトラベリングマットで手前の像と、落下する人物を切取り、背景と合成している様ですが、1〜4で人物の上を影がよぎる等、現実感を持たせるべく、細心の注意が払われています。6で人物が殆ど倒立しかけている事からみて、落下する人物は腰の部分で釣り下げられ、天井に向って引き上げられている処を撮影しているみたいです。素晴らしいアイディアと、撮影、合成、操演が一体化した名シーン。