話題の噴火映画、"DANTE'S PEAK"を観て来ました。CMでチラチラ映る映像が結構キてたんで、それなりに期待して行ったんですが、意外やかなり伝統的なパニック映画の作りでびっくりしました。特撮を除くと1970年代制作の作品だと言っても、きっと違和感ないんじゃないかな?火山を調査にやってきた火山学者と、夫が失踪した美人町長の人間模様を軸に、噴火の予兆が絡んでくるっていう作り。正直ストーリー全部とばして、特撮場面だけつないで、プロモーション・フィルムにして500円で観せてくれれば納得します(いやはや…)。作品としての指向がエンターテインメントなのにも関わらず、ストーリーが平板で、完全に特撮に負けてるのは、余りに哀しい。無鉄砲と強引さだけで何度も危機を乗り切る地質学者の行動も、ワンパターンで、あれじゃただの冒険野郎だゾ。ラストもあっけない…
対する特撮は、やはりアメリカ映画の最先端デジタル映像技術を堪能できる、素晴らしい仕上り。特撮がらみのシーンになると、とたんに画面が生き生きしてくるのは、何とも皮肉です。この映画とか観てると、最早アメリカ映画では、画面上にどんなイリュージョンでも、描けないものはないんじゃないかって気になります。やたら画面に向って物が飛んでくる構図が多いのは、懐かしの香港3D映画「空飛ぶ十字剣」みたいで、微笑ましいですが。
只、デジタルドメインの作る映像って、ILMとも共通するんですが、結構優等生なんですよね。技術的には確かに凄いし、映像としても綺麗にまとまってはいるんだけど、なんか燃えるものが足りない気がするんです。「トゥルーライズ」はまだそうでもないんだけど、「アポロ13」の映像なんか、特にそんな感じですね。何だろう、この物足りなさは?おんなじ様に史実を描いた「ライトスタッフ」の特撮は、結構燃えるものがあったんですけどね。…やっぱり演出かなぁ?…只、今回のこの映画での噴火シーン、過去のどんな映画より現実感があるのは事実ですね。
特撮シーンは殆ど総てのシーンでデジタル合成の手が入ってるんでしょうね。主役の火山はさすがに高さ10メートル以上のセットを作ったみたいですが、火砕流で吹き飛ぶ町のミニチュアなんか、かなり小さなスケールじゃないかな?ただ、その上にCGの破片を重ねちゃうんで、(むりやり)スケール感が出るって感じ。あと火山灰は新聞紙の粉末だそうです(いやはや…)。
とりあえず優れた特撮と平板なストーリーが奇妙なコントラストを見せる一作。正直10年経って観なおしたい作品かって聞かれると、ちょっとツラい。やっぱり噴火メインの作品って、舞台が限定されがちだから難しいですね。噴火モノは今年もう一本、ILMが特撮を担当する「ボルケーノ」が控えてるそうなんで、どういう仕上りになってるのか、ちょっと楽しみですね。